A Porky Prime Cut
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A Porky Prime Cut ポーキー・プライム・カット


レコードコレクター諸氏にはお馴染みだとは思いますが、レコード盤のランオフ(面の終わりの部分の音溝)には、マトリクスナンバーとともにカッティングエンジニアの手による様々なメッセージが刻み込まれていることがあります。
単なるメッセージだったり、時にはニコちゃんマークのような顔文字の先駆け(?)みたいなカッティングも見受けられ、それらを確認するのも楽しみのひとつだといえます。
今回は、そんなカッティングエンジニアによるメッセージのひとつ"A Porky Prime Cut"について解説してみたいと思います。

この"A Porky Prime Cut"は、George Peckhamという英国のレコードカッティングエンジニアによってカッティングされた盤であることを示したものです。
Peckhamは主に70年後半以降のパンク、ポストパンク/ニューウェーヴのレコードのカッティングに携わってきました。
彼が手がけた盤のカッティングには上記の"A Porky Prime Cut"(または単に"Porky"と記されることもある)といったものの他に、"You'll Never Work Again"等々、ユーモアを交えたメッセージを残すことも多いと言われています。

なお、「Porky Prime」 とは英語の意味としては「Porky = (豚のように)まるまる太った」、「Prime = 素晴らしい、極上の」 ということから、自分自身の仕事ぶりの満足度を表したものといえるでしょう。
彼は著名なカッティングエンジニアで、それなりに仕事に定評があったとは思いますが、そのことが必ずしも手がけた盤の音質が一般的に「良い」とされるものかどうかは一概にはいえないようです。




さて、スクイーズのレコードにもこの"Porky"盤が存在することが確認されています。
私の把握している範囲では、アルバム「EASTSIDE STORY」と、同時期のシングル「IS THAT LOVE」、「TEMPTED」の3作品です。

前者2作品はともにPorky盤とそうでない通常の盤が存在し、TEMPTEDはPorky盤のみを確認しています。
そこで、今回はこの前者2作品を聴き比べてみた感想とその解説をしてみたいと思います。


まず、EASTSIDE STORYの方ですが、結論からいいますとPorky盤と通常盤の音の違いは無いように感じました
なお、私はレコードコレクターとしてマトリクス違いにおける音質の違い等への関心はありますが、「自分の耳で聴き比べて明確に違いが分からなければ、それは違いとはいえない」というのが基本的な考えです。
つまり、「マトリクス番号が若いほど音の鮮度が高いので音質が良くなるはずだ」という理屈は理解しても、その違いが実際に人間の耳や体で感じ取れなければ違うとはいえないという判断です。
また蛇足ですが、数あるEASTSIDE STORYの音楽ソフトの中で最も音質が良いのは米Mobile Fidelity Sound Lab社が制作したMF盤CDだと思います。
音のきめ細かさや深みが、英国オリジナル盤をしのぐ音質でせまってきます。

…話がそれましたが、とりあえず私の耳では何度聴き比べてもPorky盤と通常盤の音の違いは認識できませんでした。

盤をさらに細かくみていくと、Porky盤はAB両面ともに"A PORKY PRIME CUT"の文字があり、B面には"SLIMMER TWINS PRODUCTION"という文字も確認できます。
通常盤はAB両面に"pr.p"という文字が確認できます。
またA面のみに"Stu"の文字があります。これはStuart Hawkesという世界的に評価の高い、イギリスのマスタリングエンジニアの手による盤に記されているものです。2013年6月現在、現役で活躍されているようです。

なお、Porky盤、通常盤ともにマトリクスは「1」ですが、カッティングに使用する原盤は異なっています。
Porky盤に書かれてある刻印は小さめの文字で、さらにレーベルに描かれた「A&M」の文字色が全体的に薄めとなっています。
対して通常盤の刻印は比較的大きめで、「A&M」が濃い色になっています。

どちらも同じ「マト1」盤のため、どちらが先にプレスされたのか?という疑問が出てきますが、私が所持しているテストプレス盤はPorky盤となっているため、Porky盤のほうが先にプレスされた「オリジナル盤」になるのではないか?と推測しています。


Porky盤レーベル

通常盤レーベル



次にIS THAT LOVEですが、結論からいいますとこちらはPorky盤と通常盤の音は明確に違い、前者のほうがカッティングレベルが高く、ラウドな音を味わうことができます
通常盤を聴き終えたあとに同じヴォリュームのままPorky盤を再生すると、音量の違いにビックリ仰天します!正にまるまる太ったポーキープライムカット(笑)
単に録音レベルが高く、音量が大きいだけであればあまり意味はないかもしれませんが、私の聴き比べた感じではPorky盤は音量レベルが高いだけでなく、ヴォーカル、高中低音それぞれが全く違った響きをもっており、「どうせIS THAT LOVEを買うならPorky盤を」と思えるくらいの違いでした。

細かく盤を見てみると、Porky盤のA面は"A PORKY PRIME CUT"と彫られていますが、B面は単に"PORKY"となっており、さらに"VESTER ROOLS OK!"の文字も見受けられます。マトリクスはA面が2、B面が1です。
レーベルはソリッドセンターとなっていることが多いようです。
通常盤はAB両面ともにマトリクスは3で、同じく両面の音溝に"◇NS"という文字が確認できます。
レーベルはプッシュアウトセンターが多いように思います。

あと、通常盤に特徴的なこととして、ヴィニール盤の色が少し曇った部分が見受けられることです。これはマトリクスが書かれてあるランオフ部分を見るとよく分かります。Porky盤や他のスクイーズの黒盤レコードと比較して、モヤがかかったように白っぽくなっています。

また、ドイツのコレクター友達によると、この通常盤(マトリクス3)は厳密には黒盤ではなく赤みがかったヴィニール盤のようです。盤を光に透かしてみると、赤くみえるということです。
残念ながら私には確認できなかったのですが、しかしこのマト3の盤は前述のように白っぽくなっていることもあり、他の盤と比較して少し違った性質であるように思います。そのことが音質に影響しているかどうかも分かりません。


Porky盤 ソリッドセンター

通常盤 プッシュアウトセンター



このコラムお読みの方でIS THAT LOVEのUKシングル盤をお持ちの方がいれば、ぜひ盤をチェックしてみてください。ここに書いてあることが当てはまっているでしょうか?
また、スクイーズの他のレコードにもPorky盤が存在する可能性がありますので、何か情報があれば教えていただければ幸いです。

以上、非常に細かく、トリビア的な要素をもつ"A Porky Prime Cut"のお話でした。




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