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アナログ盤で聴くスクイーズ


今さら感もありますが、私はスクイーズが好きですし、アナログレコードも好きです。
そして、当サイトでは各アルバム、シングルのジャケ等を視覚的に楽しんでいただけるように、たくさんのレコードをご紹介しています。
しかし、それは言ってみれば音楽が完全に「アイテム化」しているともいえ、肝心のレコードでスクイーズを聴くという行為についてはあまり言及してこなかったように思います。

そこで、今回は「アナログ盤で聴くスクイーズ」というテーマで、具体的な曲を取り上げて私の個人的な感じ方や考えを書いてみようと思います。
もちろんCDで聴くことも好きですし、実際にリマスター盤CDを聴くこともよくありますが、ここではあえてアナログというこだわりをもって、同じ曲でもCDで聴くのとは意味合いが違うと思う曲をチョイスしてみました。

これをお読みの全ての方がレコードプレーヤーをお持ちなわけでもないと思いますし、お持ちであってもご紹介したレコードをお持ちでない可能性もあるかと思います。
そういう意味では、「初心者のためのアルバムチョイス」と対極にあるコラムかもしれませんね。
なので、もしかするとこのコラムに共感していただけることは少ないかもしれませんが、そんな時は私なりのヘンなこだわりの読み物として楽しんでいただければ幸いです(笑)

実はこのコラムを書くきっかけになったある出来事がありまして、それはFacebookのスクイーズコミュニティ内で私がレコードコレクションを紹介したところ、「ところであなたは本当にスクイーズのことが好きなの?」というコメントをもらったことなのです(ちなみにコミュでコメントしている人のほとんどは欧米人です)。
一見、挑発的にも思えるコメントですが、その方は単純に「こんなにモノばかりにこだわって、ちゃんと音楽自体を聴いてるの?」と思ったのでしょう。私としては悪い気はしませんでした。
むしろ、コレクターという人種はすべてのファンに理解されるわけではないことが再認識できた、いい機会にもなりました(笑)

そのようなわけで、当初はこのコラムを「モノばかり集めている人間は本当にそのアーティストが好きなのか?」というお題に対してのアンチテーゼとするつもりだったのですが、書き進めるうちに結局マニアックな世界に舞い戻ってしまいました(笑)
なお、私は音楽についての教養や語彙が少なく、感覚的に書いているので、いささか幼稚な記述も見受けられるかと思いますが、その点は優しく読み進めていただければ幸いです(笑)
また、このコラムの内容は全くの独断と好みですので、その点を踏まえてお読みいただき、逆に「私はこう感じる」「オレはこう思う」といったご意見があれば、ぜひお聞かせいただきたいと思っています。




◆ THE WAITING GAME ◆

「アナログ盤でスクイーズを聴く」というお題目を与えられて、真っ先に思いついたのがこの曲です。
個人的にはこの曲はCDで聴くのとアナログ盤で聴くのとでは全く印象が違います。
それを最も如実に感じるのはグレンのボーカルです。
とにかくアナログで聴くと、よりエモーショナルに響いてくるんですね。

この曲はアルバムBABYLON AND ONに入っているのですが、ある時、CDで何度も繰り返し聴いたこのアルバムを何気なく12インチシングルで聴いていたら、この曲でグレンが歌い始めたときに今までの印象とあまりにも違いすぎたので、思わず「こんな曲入ってたっけ??」とレコードプレーヤーに見入ってしまったほどです。それくらいのインパクトがありましたね。

なお、この曲をアナログで聴くのはLPでも良いのですが、できればシングル盤、さらに言えば12インチ盤で聴くと、よりグレンのエモーショナルなボーカルを堪能できます。
この曲に限らず、アナログ盤は基本的には LP < 7インチシングル < 12インチシングル の順で音が良くなります。
なぜかというと、アナログ盤は溝にカッティングできる情報量が前記の順で多くなり、その分、音の豊かさが広がるというわけです。
LPと12インチシングルは同じ大きさです。同じ面積の中にLPは片面に平均5曲程度の曲をカッティングしなければなりませんが、12インチシングルは同じ面をまるまる1曲のために使えるのです。

ということは、同じ曲であればLPよりも12インチシングルのほうがそれだけ音溝を広くカッティングできる(情報を多く詰め込める)ことになり、ひいては音質が良くなるわけです。






◆ MESSED AROUND ◆

この曲も演奏、ボーカル共に臨場感が素晴らしいです。
アルバムEASTSIDE STORYの最後を飾るロカビリー調のこの曲は、もともと他の曲に比べて音数が少なくエコーがかかっていて独特のライブ感がありますが、アナログ盤で聴くとそれがよりリアルに聞こえます。
特にジュールス、グレンそれぞれのソロパートは圧巻!
ギターのミストーンや鍵盤を叩く感触が、とてもリアルに伝わってきます。
オーディオのボリュームを少し大きめにして目を閉じて聴くと、まるで(自分の)目の前でスクイーズが演奏しているような錯覚に陥ります。

先のTHE WAITING GAMEと同じくLPの音も良いのですが、できればシングル盤で聴くとよりラウドな演奏を堪能できます。
なお、本国イギリスではシングルカットされておらず、アメリカ7インチ盤のみとなります。






◆ I'M AT HOME TONIGHT ◆

限定2000枚といわれるプロモシングル、コレクターズアイテムとしても貴重なものですが、その音も非常に魅力的です。
長らく入手困難な未発表曲として珍品扱いされてきましたが、2007年にSWEETS FROM A STRANGERがリマスターCDとして再発された際、ボーナストラックとして初CD化されました。

正直、私自身はCDで聴いたことはないのですが、ヴィニール盤にカッティングされた音は明らかにCDでは聴けないラウドなものです。
特にドン・スノウのカラフルでタイト、かつ迫力のあるキーボードが堪能できます。
私としては、このダークな雰囲気のスリーブデザインからは想像できない明るい曲調という、そのギャップが好きでもあります。
写真でお分かりいただけるように、このレコード盤は片面のみに音溝がカッティングされており、もう片面には音溝はあるものの曲は入っていません。






◆ WHEN THE HANGOVER STRIKES ◆

こちらも上記のI'M AT HOME TONIGHTと同じ1982年の曲です。
同曲と同じようなデザインのスリーブを使っていますが、曲のイメージとしてはこちらのほうがフィットしているでしょう。
前半は音数が少ないので、グレンの息遣いやジョンのジャジーなベースラインが結構リアルに感じられます。
後半のオーケストラが導入される部分もグレンのギターとの絡みと相まってアナログらしい響きを聴かせてくれます。

二日酔いの気だるさを歌ったこの曲は音の定位がはっきりしたCDよりも、どこか陰影があり、くぐもったアナログサウンドの方がより一層味わい深くなるような気がします。
何でもかんでもハッキリとすれば良いというものではありませんよね。例えば、パッと明るい蛍光色のリビングに居るのもいいですが、落ち着きたいときには白熱灯の灯る寝室でゆっくりと身体を横たえたいものです。
センスのない例えで恐縮ですが、アナログレコードの魅力はそういうところにもあるのではないでしょうか?

このシングル盤は7インチのみですが、写真のように通常の黒い盤とピクチャーレコードが作製されています。
ビジュアル的に楽しいのはピクチャー盤の方ですが、音質面では断然通常盤のほうが良くなります。






◆ MOOD SWINGS ◆

1991年リリースのSUNDAY STREETの12インチシングルのB面に収められた曲。
このB面には2曲収録されており、もうひとつのMAIDSTONEもコミカルなマンドリンが終始鳴り響く捨てがたい佳曲ですが、こちらも気迫あふれるグレンのボーカルと演奏が印象的です。
その迫力がこの12インチ盤で見事に鳴ってくれます。






◆ INTROVERT ◆

この曲はイギリス12インチ盤HOPE FELL DOWNのA面、HOPE FELL DOWNの後に収められているのですが、ジャケやレーベルには一切クレジットがない謎の曲です。 つまりシークレットトラック扱いなのです。

普通、片面に複数の曲が入っていれば、その音溝の間隔で曲の数が分かりそうなものですが、この曲はHOPE FELL DOWNの直後に間髪入れずに始まり、溝が明確に分かれておらず見た目にも分かりません。
初めてターンテーブルに乗せて聴いていたとき、HOPE FELL DOWNを聴き終えて盤をひっくり返そうと思ったら、いきなりグレンが歌い始めたので、とてもびっくりしたことを覚えています。

当サイトHOPE FELL DOWNのページでも触れていますが、英版wikiには「この曲は何枚かの12インチ盤に収録されているが、他の盤には入っていない」と記されています。
つまり、必ずしもどの盤にも入っているわけではないということですが、私は1枚しか持っていないので実際はどうなのか確証がありません。

なお、HOPE FELL DOWNの12インチ盤以外では、2004年にリリースされたBIG SQUEEZEというベスト盤に収録されており、ここで聴くことができます。
しかし、12インチ盤でいきなり再生されたときのビックリ感や、アコギ1本でダークな歌詞を歌いこなすグレンの迫力と緊張感はアナログ盤でしか味わえないものです。

私の記憶の限りでは、スクイーズのキャリア(DIFFORD & TILBROOK時代含む)の中でグレンがアコギ1本のみで歌い上げるスタイルの曲は、これしかないように思います。
スピーカーの前で目を閉じてこの曲を聴いていると、スターパインズカフェ(*)でアコギを抱えて熱唱するグレンの姿が脳裏に浮かびます。

*スターパインズカフェ…吉祥寺にあるライブハウス。ここ数年、グレンがソロで来日するときにはここを好んで使用している

また、BIG SQUEEZEに付属しているグレンとクリスによる解説によれば、この曲は1974年(スクイーズ結成年)の曲だそうです。
10年のときを経て、グレンの弾き語りという形で(シークレットトラックとはいえ)日の目を見たわけですね。


ところで、「アナログ盤で聴くスクイーズ」というこのコラムには明らかに蛇足なのですが、グレンが気迫のある歌い方をするこの曲が、どんな内容の歌詞なのか気になって仕方なかったので対訳をしてみました。ここで皆さんとシェアしたいと思います。
ちなみに「introvert」とは「内向的な人、内気な人」といった意味だそうで、対訳では私なりに内容に合わせて意訳しています。



君はそこの角に座って指を噛んでいる
カッコ悪いんだけど、なぜかとても可愛らしく見える
パーティーではレモンをいじくって遊んでいる
カメラや流行のツイードを眺めながらね

爪の裏がちょっと汚れている
ベイビー、君は何を考えているか分からないね

キャベツみたいな細いウェストに視線を落として
「お腹が空いた」と君は言う
君は僕の襟首に触れて僕の別れを台無しにしてしまう
私はハンサム、夢の中でお休みしている、と言いながら

しかし、ときに愛は本当に傷つけてしまう
君は何を考えているかよく分からないよ

君が黙っていようと叫ぼうと僕は一向に構わない
でもね、君は座ったらそこに君がいなかったと考えてしまうだろう_
僕はシャツの汚れからより多くの反応を得ることができるんだ
君はまるで本当の内向的な人みたいだね

君は全く小説を読まない ただ問題とダイエットだけ
夜の直後には朝が来るって知っていたかい?
君はきれいだよ。ああ、病的なくらい君が好きなんだ
もし君が僕を見捨てるのなら、ボクは戦うよ

でも、君はそんなことお構いなしに浮気をするつもりだね
ベイビー、君はイントロバートだよ

You sit in the corner chewing your finger
Looking so stupid but somehow so sweet
You play with your lemon watching the party
Looking at cameras and fashionable tweed

Behind your nail a piece of dirt
Baby you’re an introvert

You say that you’re hungry watching your waistline
Common as cabbage, and maybe as green
You mess up my parting by touching my collar
Saying I’m handsome I’m off in a dream

But sometimes love can really hurt
Baby you’re an introvert

I don’t mind you quiet you can shout I don’t care
But baby when you sit down you’d think that you weren’t there
I’d get more response from a stain on a shirt
But you’re on the level as a real introvert

You never read novels just problems and diets
Did you know that morning came just after night?
You beautiful dum dum I love you like illness
If you were to leave me I’d put up a fight

But don’t you try and be a flirt
Baby you’re an introvert
_



と、このような歌詞です。
実際のところ、詳細はよく分かりませんが、あまり穏やかな雰囲気ではないようですね…。
皆さんはどう解釈されますか?




以上、思いつくままに個人的に「アナログで聴くとより良い」と思うスクイーズの曲を挙げてみました。
THE WAITING GAMEの項でも書いたように、基本的には12インチシングルはその性質上、音質が良いです。
しかし、スクイーズの12インチ盤が多くリリースされたCOSI FAN TUTTI FRUTTIとBABYLON AND ONの頃は、シングルB面に収録された「〜Buff」のようなミックスが正直あまり好きではないので、繰り返し聴いていないのが残念なところです…。

現時点では6曲を挙げていますが、時を違えて聴いてみると同じ曲でも全く違う印象に聴こえるのはよくある話です。
また、そのときに追加でご紹介することもあるかもしれませんが、気分的なものなので気長にお付き合いいただければと思います。



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