スクイーズ来日公演2016 特設サイト
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◆ スクイーズ来日公演2016 ◆ SQUEEZE JAPAN TOUR 2016

4/25(月)ビルボードライブ東京 1stステージ開場17:30 開演19:00 2ndステージ開場20:45 開演21:30 サービスエリア8900円 カジュアルエリア7400円
4/26(火)ビルボードライブ東京 1stステージ開場17:30 開演19:00 2ndステージ開場20:45 開演21:30 サービスエリア8900円 カジュアルエリア7400円
4/27(水)ビルボードライブ大阪 1stステージ開場17:30 開演18:30 2ndステージ開場20:30 開演21:30 サービスエリア8900円 カジュアルエリア7900円

* このページに記載してあることは基本的に2016年4月現在のものです。後日に分かったことなどは追記している場合もあります

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セットリスト *各日共通

1stステージ

01. Hourglass
02. Is That Love
03. Another Nail In My Heart
04. Only 15
05. Beautiful Game
06. Some Fantastic Place
07. The Truth
08. Nirvana
09. The Elephant Ride
10. Pulling Mussels (From the Shell)____
11. Everything
12. Labelled With Love
13. Slap & Tickle
14. Black Coffee In Bed
15. Goodbye Girl
↓ 
16. Take Me I'm Yours
2ndステージ

01. Hourglass
02. If I Didn't Love You
03. Open
04. Cradle to the Grave
05. Harper Valley PTA
06. Tempted
07. Pulling Musseles (from the shell)
08. Up The Junction
09. Snap, Crackle and Pop
10. Is That Love
11. Another Nail In My Heart
12. Happy Days
13. Slap & Tickle
14. Black Coffee In Bed
15. Goodbye Girl
↓ 
16. Take Me I'm Yours


【 セットリストで振り返る2016年来日公演 】

今回の来日公演は東京2日、大阪1日の計3日間でしたが、3日ともに全く同じセットリストでした。だいたいの予想はできたことですが、選曲や曲順は昨年の英国ツアーのものがベースになっています。クリスがボーカルをとったElectric Train、I Don't Wanna Grow Up、Cool For Cats以外の曲はすべて日本で演奏されました。
*参考 SQUEEZE LIVE 2015 英国ツアーの演奏を収録した即売CD

英国ツアーではやっていない日本公演独自の演奏曲も期待されましたが、If I Didn't Love You1曲が日本のみの"ボーナス曲"となりました。
新譜「CRADLE TO THE GRAVE」から9曲(ボーナストラックのカバー曲含む)を演奏し、その他は40年を超えるキャリアの中から"ベスト・オブ・ベスト"的な選曲となっています。ツイッターでどなたかが指摘されていたように、1982年のベスト盤「SINGLES 45's and under」の収録曲からCool For CatsとAnnie Get Your Gun以外、すべての曲を演奏しました。

ビルボードライブという会場の性質上、1ステージあたりの公演時間は最長でも75分ほどという制約のある中、非常に考え抜かれたセトリだったといえます。
ここでのショウは1st、2ndステージは全く同じセトリか、多くても2〜3曲のみを替えてくるパターンが多いといわれています。しかし、今回のスクイーズは各ステージ16曲中、8曲が違うという大盤振る舞いなセトリとなりました。
ただ、両ステージどちらも通して観るファンにとってはラッキーだったものの、あくまで「1ステージで1ショウ」と考えてひとつのステージしか参加しなかったファン、または都合でどちらかのステージしか参加できなかったファンは、もしかすると人によっては少しだけ不満が残る結果になったかもしれません。

オープニング曲の「Hourglass」に関しては、東京初日は1st、2ndステージともにメンバーがステージに上がってからの演奏開始でしたが、東京2日目と大阪公演では楽屋から演奏しながら歩いて登場するスタイルでした。
演出の違いのみならずメンバーの使用楽器も違っていたので、必然的にサウンド的に受ける印象も全く違うものになりました。
東京初日はグレンはエレキギター、スティーブンはステージ上のキーボードを演奏。東京2日目以降はグレンはウクレレ、スティーブンは鍵盤ハーモニカを演奏しました。
そのため、初日に比べて2日目以降のオープニングはアコースティックな響きとなり、柔らかくほのぼのとしたショウの幕開けになったという印象です。
どちらが良い悪いではありませんが、個人的には後者の方が好きでした。


★ セトリ"用紙"のお話

ビルボードライブでは東京、大阪ともにステージと客席が非常に接近していることもあって、多くのファンがライブ後にセトリを入手していました。
ところで、今回のセトリ用紙へ記載された曲目は初めから完全に定まっていたわけではなく、リハや本番を繰り返していく中で3パターン作成されたことが確認できました。それらを写真つきでご紹介してみようと思います。

東京初日、リハ段階でのセトリ用紙。これらは本番の際にはステージ上に貼られていません。左側の1stステージ分をみると、当初はPulling Musselesの演奏が未定となっていたことが分かります。結果的にはThe Elephant RideとEverythingの間に演奏されました。また、いついかなるどんなステージでも必ず演奏されてきた名曲Take Me I'm Yoursの表記がなく、あわやスタメン外れ(?)となるところでした。もしくはこの曲をやることは当たり前なので、あえて書かなかったのでしょうか?結果的にはアンコールで演奏されています。
右側の2ndステージ分を見ると、Hourglassの扱いをどうしようか迷っていたことが分かります。結果的には1st、2nd両ステージのオープニングとなりました。そして、1stステージで演奏したSlap & Tickleは2ndではやらない可能性もあったようです。Take Me I'm Yoursが当初はHappy Daysの後に演奏される予定だったことが分かります。
結果的に、このセトリのTake Me I'm Yoursの箇所でSlap & Tickleが演奏され、Take Me I'm Yoursはアンコール曲となりました。


東京初日の本番にステージ上に貼られたセトリ用紙。こちらの掲載分はスティーブンが使用したものです。手書きの数字は何かのタイミングかボリューム等の覚書でしょうか。
左側1stステージ分は上記のリハ段階のものと変わりありません。
右側2ndステージ分はリハ段階では未定だったHourglassが明確にオープニングに組み込まれています。また、同じくリハ段階では本編の終わりから3曲目に書かれていたTake Me I'm Yoursがアンコール曲としてセットされています。


東京2日目と大阪で使用されたセトリ。こちらはメルヴィンが使用したもの。アコースティックギター、エレキギター、ペダルスティールギター、エレキシタール、マンドリンと5種類もの楽器を担当していたことが分かります。エレキシタールは、なんとNirvana1曲のためだけに持ち込まれたようです。彼らのサウンドへのこだわりが良く分かります。たった3日間の日本公演でも一切妥協していません。
このセトリが使用された東京2日目と大阪公演は演奏曲が完全に定まり、リスト掲載通りの演奏となりました。
* なお、こちらのセトリはツイッターで仲良くさせていただいている Lucky in Loveさん がお持ちのものを当日写真を撮らせて頂きました。サイトへのアップも快く許可してくださり、感謝申し上げます。

今回のセトリ用紙には特に東京や大阪といった表記はないことから、1stと2ndの違いだけであとは各日共通の演奏曲にする予定だったことも分かります。
また、東京2日間と大阪1日を休みなし連続でライブをするという強行日程なので、のんきにセトリの見直しをするわけにもいかず、とっさの判断が求められたこともあったと思います。ほとんどMCを挟まずに次から次へと名曲を繰り広げる、まさに息もつかせぬ充実したライブとなりました。


★ セトリの裏話 - なぜ1stと2ndであれだけセトリが違ったのか

来日を控えた4月の上旬、ロンドンのThe White Swanというパブで来日公演のウォームアップギグが行われました。そのときに演奏された曲がこちら。
当然この日のセトリは今後行われる来日公演の構成、時間配分を意識したものになります。
少々見づらいですが、左半分が「Set One」、右半分が「Set Two」となっています。Set Oneの一曲目はHourglass。よくみるとお分かりのように、これらは一曲たりとも重複していません。
実はグレンは来日前のこのリハの段階で、ビルボードライブでは1stと2ndそれぞれのステージで一曲たりとも重複してはいけないと認識していたようなのです。そのため、このようなセトリを組んでいたと思われます。
ご存知の方も多いと思いますが、ビルボードでは1日に1stと2ndの両ステージがあり、それぞれが完全に独立したショウになっている、つまりセトリはほとんど同一のことが多いのです。今回のスクイーズの公演もそのような形になると思われていました。
しかし、私が関係者から「どうやらグレンは両ステージで全く違う曲をやるものだと認識しているらしい。一曲も被らないかもしれません」と連絡を受けたのは東京初日公演の数時間前。これには驚き、喜んだと同時に少し複雑な気持ちにもなりました。両ステージを通して観るファンはいいものの、都合によりどちらかのステージしか観れないファンにとってはライブの「半分」しか観れないことになってしまいます。
しかし、初日が終わってみれば各ステージ16曲中、半分の8曲のみが違うという結果でした。文字通り半分はホッとしましたが、半分はどちらかのステージしか観れなかったお客さんのことを思うとやはり複雑な気持ちでした。
でも、行かれた方の感想ツイート等を見ていると、1ステージのみを観てセトリ的に欲求不満だ…といった方はいなかったように思います。それほどスクイーズはセトリ云々を気にさせないくらいのパフォーマンスをしたということではないでしょうか?




スクイーズ来日によせて 公演所感

【 「スクイーズ」来日という事件 】

「あきまもさん、どうやらスクイーズが4月にビルボードで決まったようです。応援よろしくお願いします!」

関係者の方からその一報を受けたのは今年の2月初旬のこと。しかし、はじめはなぜか「スクイーズ=グレン」と脳内変換してしまい、非常に落ち着いた反応をしてしまいました。

「ほー、スクイーズがまた日本に来るんだ。確かちょうど一年前に来たよね。今回は結構短いインターバルだなぁ〜。…ん?スクイーズ?スクイーズって、あのスクイーズですか!?」

どうやら本当にスクイーズが来日するらしい!22年前の初来日のときもそうですが、なぜスクイーズの来日はにわかに信じがたいのでしょう?(笑)
とにもかくにも、あのスクイーズが再来日する!スクイーズということは念願のクリス・ディフォードの来日も!そして、バンド形態での演奏が楽しめる!これはとんでもないことになりそうです!そんな期待でいっぱいの瞬間でした。

公式には2/9にビルボードライブよりスクイーズ来日が正式に発表されました。私自身は浮かれて、発表の詳細を確認することもなくツイッターで「スクイーズが4月に来日する」旨をお知らせしました。
しかし、ほどなくして件の関係者から連絡が。「あの写真ヒドイね…。クリス、来るのかな?」と。えっ?写真がおかしい?どういうことだろう??急いでビルボードの公式ページを確認すると、なんとクリスが体よくカットされた写真が使用されています。
さらに来日メンバーのインフォが「グレン・ティルブルック以外は未定」とあります。これは一体…。
まず一番に気になったのが「クリスは来るのか?」ということ。今回はあくまで「スクイーズ」としての来日。クリスが来ないという選択肢はありえないはず。
しかし、あの写真に加えてグレン以外の来日は未定というインフォを見る限り、クリスの来日には暗雲が漂いはじめました。

ドラムのサイモンに関しては私が個人的にツイッターで「日本に来るの?」と尋ねたところ「YESSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS」という返事をいただき、少なくともサイモンは来ることが判明。
その後、ビルボードから来日メンバーが正式に発表され、どうやらクリスは今回は来日しないこと、そしてベースはルーシー・ショーではなく、なんと昨年にスクイーズを脱退したジョン・ベントレーが来日することが分かりました。

後日、クリス・ディフォードから私信が届き「今回は自身は来日しないこと、そのことについて大変申し訳なく思うこと、変則なメンバーだけども彼らは素晴らしいバンドであること、ライブでは新曲を楽しんで欲しいこと」などが綴られ、最後に"have a happy day Cd"と締め括られていました。

それまでは「クリスのいないバンドをスクイーズと呼ぶなんて、どうなの?」みたいなモヤモヤした気持ちもあったのですが、このクリスからのメッセージを機に今回のスクイーズ来日を全力で応援することを決意しました。
当サイトの1994年初来日時のコラムでは、見出しを"スクイーズ来日という「事件」"としましたが、今回はさしずめ"「スクイーズ」来日という事件"といったところでしょうか。

こうして「スクイーズ」22年ぶりの来日騒動が幕を開けました。



【 スクイーズとの22年ぶりの再会 】

来日の公式発表からライブ初日までわずか2ヶ月ちょっと。一日千秋の思いを味わうひまもなく、東京初日である4/25、その日はあっという間にやってきました。
この日の1stステージ、私は自由席の整理番号「1」を取ることができ、当日も会社を早退して開場時間までにビルボードに到着しました。
初日はひとりでの参加。もともと来日が発表された当初はライブ自体東京公演は4/26のみの予定で、この25日は追加公演扱いです。
1ステージあたりの時間も短く、割合的に少々高いチケット価格なこともあってか、追加公演扱いである初日はビルボードのウェブでチェックする限り、チケットの売れ行きがいまひとつの印象。
しかし、この22年ぶりの来日公演のオープニングを飾る記念すべき初日、会場を見渡す限りはなんとかお客さんも入っている様子。ひとまずは安心しました。

17時半の開場から19時の開演まで、1時間半の待ち時間。普通であれば話し相手もいない自分にとっては、手持ち無沙汰で長い時間に感じられます。
しかし、今回はスクイーズをより多くの音楽ファンに知ってもらうためにツイッターやファンサイトを使って微力ながら応援してきた、その集大成と勝手に位置付けていた来日公演。
なので、この日は今までの地道な活動やこれから始まるライブに思いを馳せる時間も必要でしたし、そう思うとそれほど長い時間には感じられませんでした。

19時を少し回った頃、ついにその瞬間が訪れました。スクイーズの登場です!東京2日目と大阪ではメンバーが楽器を手にして楽屋から演奏しながら歩いての登場でしたが、初日はまずメンバーがステージにあがり、そこからメンバー各々が楽器を手にするというパターンでした。
演奏前にグレンが手短にひとこと。「元気かい?ここに来れてよかったよ。クリスからの愛を送るよ。僕たちと一緒にね!彼は飛行機がダメなんだ…(以下聞き取れず)」。やっぱりクリスがいないことを気にしている様子。
MCの後に、おもむろにグレンがエレキギターでリフを掻き鳴らし始めます。昨年の英国ツアーを観に行ったファン、またはそのライブCDを聴いたことのあるファンなら、このオープニング曲が何かすぐに分かったはず。足ではワウペダルを踏み始めた。間違いない、あの曲だ!
記念すべき22年ぶりの来日公演初日は、英国ツアーと同じく「Hourglass」で始まりました。

そんなオープニングの「Hourglass」を聴きながら、私は感極まっていました。
涙はなんとかこらえていましたが、サビの部分をメンバーと一緒に歌おうとすると一気に涙腺が崩壊しそうになります。まともに歌えません。
ステージにはクリスこそいませんが、どれだけこの日を待ち望んでいたことか。それを思えば、冷静ではいられないですよね。

どんなライブでもオープニングナンバーというのはファンに非常に大きな印象を残します。
さらにそのライブが初日であればなおさらのこと。22年前の初来日公演のオープニングが「Another Nail In My Heart」だったことが記憶に新しいファンも多いと思いますが、この「Hourglass」も同じく日本のファンには忘れられない一曲となることでしょう。





【 調子も上々 輝いていた5人のスクイーズ 】

メンバーの表情をみると、初日ということでみんなステージの上から客席を見渡して、オーディエンスの反応を確かめているようです。
私が特に印象的だったのは今回が初来日だというジョン。おそらくメンバーの中で一番長い時間客席を見ていたように思います。その表情は「ほう、これが日本のファンか。なかなかやるじゃないか」と思っているようにみえました。そんなジョンをみて、私も感激ひとしお。
グレーのスーツにハットを被ったジョンは、まさに英国紳士そのもの。他のメンバーのような派手さはありませんが、白髪を後ろに結って悠然とベースを刻むその姿は紛れもなく80年代のスクイーズ黄金期を支えた、あのジョン・ベントレーでした。

サイモンは2011年のグレンソロ来日公演の際に同行して以来の日本でのライブ。その表情はジョン、メルヴィンに向かって「これが日本のファンだ。見たか、スゴイだろ?」と得意げにしているようにも。
グレンソロ公演の時は2ピースのアコースティックライブということで、それほど派手な演奏ではなかったはずですが、今回のフルバンド形態のライブではパワフルドラマーの本領を存分に発揮していました。
90年代までのオリジナルメンバー、ギルソン・レイヴィスもしかり、やっぱりスクイーズにはこういうパワフルなドラマーが合っていますね。
グレンがポップなメロディを安心して歌えるのは、バシッとリズムを決めてくれる強力なリズム隊の後ろ盾があってこそ。メロディだけでも独り歩きできますが、このバンド演奏との一体感こそがスクイーズなのだと再認識しました。

スティーブンは写真や動画で見た通り、実際も非常に端正な顔つきです。
曲によってキーボード、鍵盤ハーモニカ、アコーディオンを器用に弾きこなすスティーブンはスクイーズサウンドの要。英国ツアーやこの日本公演でのセトリの構成にも大きく関わっていると言われています。
特筆すべきは、あの細い脚!グレンやジョンの半分くらいかと思われるほどの細さ(笑)。この細く長い脚で内股外股を繰り返してリズムを刻む姿は、多くのファンにとって印象深かったのではないでしょうか。
また、その動きや黒縁のメガネをしてエルビス・コステロを思い浮かべたファンも多かったようですね。

メルヴィンもスティーブンと同じくサウンドの要です。スクイーズの正式メンバーではないものの、こと今回の来日公演に関しては貢献度が非常に高いです。
セトリのところでも書きましたが、アコースティックギター、エレキギター、ペダルスティールギター、エレキシタール、マンドリンの5種類の楽器を曲によって使い分けていました。メルヴィンのおかげで、数々の名曲たちがどれだけ表情豊かに聴けたことか分かりません。
演奏中に時折見せる険しい表情は、彼が「いい音を出す」ことだけにフォーカスしている"職人"の証でしょう。しかし、その表情をもってメルヴィンを"愛想がなくとっつきにくい人"だと思うファンは皆無なはず。その後にみせる爽やかで柔和な表情は、彼の人柄をよく表していますし、その人柄は奏でるサウンドにも表れています。

グレンの表情は…実は私はグレンの足元に近いテーブル席に座っていたので、1stステージではグレンの表情はほとんどうかがい知ることはできませんでした。
顔を上げずに普通に正面を向けばグレンの股間が目の前にあります(笑)。それくらいの至近距離です。
そんなグレンを見ながら考えていたことといえば「あれっ?今日の腕時計は長年愛用していたロレックスじゃないな」とか、「いつもはヘンな色合いの靴を履くことが多いけど、今日は地味目のまともな色の靴だな」とか、足元のエフェクター群をみて「こんな種類のエフェクターを使っているんだ」などなど、まるで女子のようなチェックポイント(笑)
しかし、声を聴く限りはどうやら調子は良さそう。実は、昨年の英国ツアーのCDを何枚か聴いた感じでは、正直グレンはイマイチ声が出ていないなと思っていた面があったのですが、この来日公演に関しては全くの杞憂だったようです。



【 期待はしていたが、その期待をはるかに上回ったライブパフォーマンス 】

そんなことを思い浮かべる間にも、ファンなら誰もが知っている名曲が次々と演奏されていきます。
ライブに参加したファンの声を聞くと「期待はしていたが、その期待以上のライブだった」というものが結構多かったです。自分自身もそうでした。期待して期待以上のショウでした。
また、これもSNSでよく言われていたことですが、今回のライブはとにかくMCが少ない。というよりも、ほとんどありません。これは限られた時間の中で一曲でも多く演奏しようというスクイーズ側の配慮だと、会場の誰もが理解しました。
オープニングは楽屋から演奏しながら登場して、アンコール曲を終えてステージから去っていくときも楽屋まで楽器を奏でている。つまり、彼らはファンの前ではずーっと演奏していたのです。これも「できるだけ長い時間ファンを楽しませたい」という気持ちの表れでしょう。
それでなくても1ステージあたり75分程度という時間。「君たちはできるだけたくさんの曲を聴きたいだろ?僕たちだって一曲でも多く演奏したいんだ」というスクイーズのミュージシャンシップと気持ち。うれしかったですね。

具体的な演奏曲についてはセトリのコラムに譲ることとして、さらに一曲一曲を解説していくとキリがありませんので割愛しますが、個人的にポイントだと思った曲だけ触れたいと思います。
聴けてよかったと思うのは「Happy Days」でした。この曲のギターソロは個人的にスクイーズの中で3本の指に入る好きなソロなので、このソロをアコースティックギターではなくエレキギターで聴けたというのは嬉しかったです。
蛇足ですが、その他の「2本」は「Another Nail In My Heart」と「Some Fantastic Place」。今回の来日公演で3曲とも、しかもエレキギターで聴けたのは喜びこの上ありません。

1stステージの終盤、「Everything」から「Labelled With Love」へのペダル・スティール・ギターのつなぎもよかったです。英国ツアーのライブ通りに再現されています。観たかったライブが、まさに今ここで行われているという事実に嬉しくなります。

ライブのハイライトは「Slap & Tickle」でしたね。オリジナルバージョンは1979年。当時はニューウェーブ全盛期で、この曲も例外ではなくシンセの使い方がまさにその時代の音でした。
しかし、今回の公演ではメンバー全員がステージの前方に出てきて、アコースティックかつスリリングなアンサンブルを聴かせてくれました。
中でも途中のスティーブンとメルヴィンによるアコーディオン VS マンドリンの掛け合いが熱かったです!その直後のサイモンのパーカッションソロも聴き応えありました。思わずこちらも手に汗握ってしまいます。
昨年の英国ツアーでもこの曲を演奏していたのは知っていましたが、その映像をみると「何と楽しそうなライブなんだろう」と英国でライブを観たファンを羨ましく思っていました。しかし、その半年後、まさかこの日本で観ることができるとは夢にも思いませんでした。しかも、キャパが300人クラスの小さな会場で…。このスクイーズとファンの一体感はたまりませんでしたね。

演奏が始まってもっともイントロ的に興奮したのは、やはりアンコールのTake Me I'm Yoursでしょうか。あの"カチ カチ カチ…"という電子リズム音が聞こえてきた瞬間、会場の誰もが「来た!」と思ったことでしょう。
スクイーズ、グレンソロを問わずに、ライブでは必ずといっていいほど演奏される、事実上のデビュー曲にして名曲中の名曲。これを聴かずにライブは終われない!という曲ですね。
しかし、私自身、ライブ本編が終わった時点ですでに満足感でいっぱいで、「そういえばTake Meを演ってないな」などと冷静に考える余裕もなく、アンコールの際にあのリズム音を聴いてハッと我に返ったものです(笑)
自分の中では、これまで体験した中で最も「来た!」感のあるTake Me I'm Yoursでした。

あと、少しだけマニアックな話をすると、一年前のグレンソロ公演でスクイーズの新曲として披露された「You」という曲。この曲はその年の夏にリリースされた「CRADLE TO THE GRAVE」に収録されますが、その際にタイトルと歌詞が完全に書き換えられて「Everything」という曲になりました。そう、今回の来日公演1stステージで演奏された「Everything」です。
つまり、グレンのソロ公演に足を運んだファンは、一年前に「Everything」のデモ曲を聴いていたことになります。
そういう意味ではグレンソロ公演で「You」を聴いたことは、結果的に翌年のスクイーズ来日公演への伏線になったのかな…などと思ってみたりします。

「スクイーズの曲はポップだ」というのはファンの共通認識だと思いますが、今回の来日公演では「彼らのライブは極上のエンターテイメントだ」という、もうひとつの事実をファンの皆で再認識できたように思います。
昔からのファンは「彼らを好きでよかった」と思い、新しくファンになった人は「彼らを好きになってよかった」と思ったはず。
個々人それぞれの思いはあるにせよ、その場にいた人は、みんな幸せだった。そんな22年ぶりの来日公演だったのではないでしょうか。





ジョンに楽屋へ招待していただきました - music unites the world in peace -

東京公演2日目の1stステージ終了後、ジョン・ベントレー氏が私と妻をスクイーズの楽屋へ招待してくれました。
貴重な体験をさせてもらったので備忘録として残しておきたいと思い、こちらに書き留めておくことにしました。
なお、楽屋招待への詳しいいきさつは割愛しますが、これは関係者等のコネを利用して無理矢理入れてもらったようなものではなく、あくまでジョンに招待していただいたものであることをお伝えしておきます。

いくら招待して頂いたとはいえ、楽屋はミュージシャンにとって半プライベートな空間でもあり、ましてやタイミング的に1stステージが終わって一息休憩を入れると同時に次の2ndステージに向けて気持ち作りをしなければならない大切な時間。
そのようなところに長居をするわけにはいきませんし、するつもりもありませんでした。

ビルボードのスタッフに案内されて楽屋口までくると、楽屋の入り口にはジョンがいて、先客と立ち話をしていました。
先客との立ち話を終えて、ひとりになったジョンにすかさず駆け寄り、自己紹介と妻の紹介、そして招待してくれたことへの感謝の気持ちを述べました。緊張しながらも感激の瞬間です。
当初の予定では、私はジョンに今回日本に来てくれて感謝していること、ソロアルバムの「... based on a true story」とジョンも参加した「CRADLE TO THE GRAVE」が大好きで、その気持ちを伝えたかったこと、これまで観た来日公演が素晴らしかったこと、そして可能であれば持参したアルバムにサインを頂けたらうれしいことを手短に伝えてその場を後にするつもりでした。
しかし、そんな遠慮気味の私たち夫婦をジョンは快く迎えてくれ、なんと楽屋の中まで案内してくれました。


楽屋ではスティーブンとメルヴィンが食事をしていました。軽く挨拶した後、お邪魔にならないように心掛けました。
グレンとサイモンは楽屋の外で関係者らしき方たちと話している様子。
ジョンは「何か飲むかい?コーラにする?水もあるよ」と飲み物を勧めてくれ、私たちはペリエのミネラルウォーターを頂きました。お互いにアルコールなしでの乾杯です。
念願の「... based on a true story」のジャケットにサインを頂くこともできました。その際の気遣いに感激しました。「サインはどこにしたらいいかな?フロント?バック?どこでも君が好きなところにするよ」と。

ステージ上のジョンはサイモンと共にスクイーズの屋台骨であるリズム隊を務める渋い紳士ですが、楽屋でお会いしたジョンもステージ以上に絵に描いたような紳士でした。
印象的だったのは私たちの拙い英語が聞き取れなかったときに口にした「Pardon?」という言い方。
これまでに海外旅行を含めて多くの欧米人と少なからぬ言葉を交わしたことがありますが、先のような状況ではほとんどの人が「Sorry?」といいます。「Pardon?」という言い方は私の感覚ではどこか上品な言い回しに聞こえますし、そもそもこの言い方は学校の教科書でしか見たことがありません(笑)
そんな「Pardon?」という言葉を口にしたジョンはひときわ紳士にみえました。


「... based on a true story」についていくつかのお話も聞けたので、ご紹介します。
アルバムジャケでジョンが着用しているジャケットですが、あのジャケットはもともと無地のブラックスーツで、その生地にジョンが自分でペンを使ってラインを引いたのだそうです。
あと、アルバムのジャケ裏に「To Be Continued...」とあるので、「次回作の予定はあるのですか?」と聞いたら、「いつの日かね」と言いながら笑っていました。いつかはリリースされるかもしれませんが、少なくともすぐには期待できそうにありません(笑)
また、メルヴィンに向かって「これは僕のソロアルバムなんだ」と紹介しているのが面白かったです。

私が「... based on a true story」と一緒に持参していた「CRADLE TO THE GRAVE」のジャケを眺めながら、「僕はこのアルバムで5曲ベースを弾いているんだ」と教えてくれました。
このアルバムの完成を待たずにスクイーズを脱退したとはいえ、きっとジョンにとっても誇らしい作品なんだろうなと感じました。

他のメンバーとも少しだけ接することができました。
ほんの短い時間でしたが、メンバー全員に今回日本に来てくれたことへの感謝の気持ちと、ショウで楽しい時間を過ごさせてもらったことを伝えることができました。
サイモンは歩きながら軽食をつまみつつ、次のステージに向けて身体を冷やさないようにパーカーを着ていました。
しかし、この人はステージと楽屋で全く印象が変わりませんね。いつでもユーモアたっぷりで、楽屋やその周辺を常に元気よく動き回っていたような気がします。

メルヴィンは常に笑顔を絶やさず、私たち二人を歓迎してくれて本当にいい人でした。
会話の途中で「君たちに見せたい写真があるんだ」といわんばかりに、おもむろにiPadの中のファイルを探し始め、やっと見つけて「これ、綺麗でしょ!」と見せてくれたのは、ビルボード東京の4階客席から写したステージの写真。
なるほど、美しい写真です。でも、この風景、私たちも開演前にこれでもかというほど眺めていた景色なんですよね(笑)。
メルヴィンにとっても印象的な風景だったのでしょう。確かに私もこんなに美しいステージを見たことがありません。「この美しい景色を君たちとシェアしたい」という、その気持ちが嬉しかったです。

スティーブンはステージでずっとかけていた黒縁のメガネを楽屋では外していました。至近距離で見る彼は、やっぱり男前です。非常に端正な顔をしています。
彼はグレンと並んで「CRADLE TO THE GRAVE」のサウンドメイキングでは重要な役割を担っていた人物。そんなスティーブンに敬意を示して、「私はこのアルバムが大のお気に入りです」と伝えたつもりです。「本当?」と返してくれました。

グレンは楽屋ではあまりしゃべりません。おそらくメンバーの中でもっとも口数が少なかったと思います。少なくとも自分から誰かに話しかけることはありません。 これまでにもグレンのライブ直前のナイーブな様子は伝え聞いてはいましたが、なるほどその通りです。グレンにとってはおそらく他のメンバー以上に大切な開演前の時間。私も必要以上にはグレンに近づきませんでした。

そんなグレンとのほんのわずかな会話の最中、妻はジョンから「... based on a true story」のポストカードリーフレットを頂いていました。さすが、コレクターの妻!記念になるモノを入手してくれました(笑)。
「彼らに手ぶらで帰ってもらうのも何だし」というジョンの気遣いなのだと思います。ご丁寧に2枚もいただきました。私たちは既に「... based on a true story」のことは充分に知っていますし、そのPRとしては私たちに手渡す意味はありませんからね。その分、日本でしっかり宣伝させてもらいたいと思います。


メンバーと一緒に写真も撮影させていただくことができました。
ジョンとは早いうちから撮らせていただいていたのですが、他のメンバーともタイミングをみて手短にお願いしました。残念ながらメルヴィンは席を外していましたが、それは仕方ありません。
初来日の際にグレン、クリスと一緒に撮った写真、またそのときの感激は一生の思い出ですが、今回もそれに匹敵する生涯の宝物となりました。
まともな英語も話せない私たち夫婦を快く歓迎してくれ、生涯忘れることのない素敵な思い出を作ってくれたジョンをはじめ、スクイーズのメンバーには感謝のひとことです。

楽屋を後にする際には、改めてメンバーひとりひとりと握手を交わしてお礼を言うことができました。
私と妻が「Thank you!」と言うとメンバーが「アリガトウ!」と応じてくるので、改めてこちらも「ありがとう!」と返しました(笑)

最後に、ジョンからいただいたメールに添えられていた一文をご紹介します。

music unites the world in peace ...

65歳にて初来日したジョン。英国人でさえ正確な意味を知ることが難しいといわれているスクイーズの歌詞を理解しているとは到底思えない日本人が、異国の地のライブ会場で幸せいっぱいな表情をしていたことは、さぞかし不思議な光景だったと思います。

音楽には言葉や国境を越えて人々を幸せにするパワーがあることは、英語を完全に理解しない少なくない日本人の洋楽ファンなら誰でも感じていることです。
それをこの3日間のライブ会場で一番強く感じたのは、他ならぬジョン自身だったのではないでしょうか?

ジョンが40年近くも前から演奏してきた楽曲たちが、英国から遠く離れた日本の地でどれだけ音楽ファンを楽しませてきたか。それを分かってもらえたという意味で、ジョンが来日してくれて本当に良かったと思います。

正規メンバーであるルーシー・ショーの出産によって、脱退したはずのスクイーズに急遽召集がかかって来日したジョン・ベントレー。
今後どんな形で来日するか、またはその機会があるかどうかは分かりません。
ただ、彼の奥様に聞くところによると、ジョンは日本でのファンの歓迎やおもてなしに相当心を揺さぶられたそうです。
たった5日間の駆け足の日本滞在でしたが、私たちファンの感動と同じくらいの気持ちを持って帰ったと思います。
きっとまた日本に来てくれると信じています。

Thank you John Bentley for your kindness.
Also want to thank his daughter Bebe, his wife Sara and "whole Squeeze family" in Japan.




バイオグラフィー

1974年の結成以来、2度の解散と再結成を経て42年のキャリアをもつ英国ポップバンド。ビートルズ時代から始まる英国ロック&ポップスの伝統を今に受け継ぐ正統派バンドのひとつ。
その核はいつの時代でもソングライティングの要であるディフォード&ティルブルックだ。
70年代、80年代には「COOL FOR CATS」、「UP THE JUNCTION」、「TEMPTED」といったヒットソングを放ち、1994年には結成20年でファン待望の初来日を果たす。
昨年には17年ぶりのオリジナルアルバム「CRADLE TO THE GRAVE」をリリース。その前世紀から何ら変わらぬ黄金のポップセンスは、往年のファンのみならず多くの音楽ファンに存在感を知らしめた。
フロントマンのグレンは初来日以降もたびたびソロで来日しているが、今回ついにファンが待ち望んだスクイーズとしての再来日を実現!
残念ながらフロントマンのひとりであるクリスとバンド初の女性メンバーとなるルーシー・ショーの来日はないが、それを補って余りあるバンドサウンドでファンを納得させてくれるはず。



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CRADLE TO THE GRAVE




来日関連最新ニュース履歴 

2016/4/24
グレンがインスタグラムに東京のホテルからの眺めを投稿し、すでに日本入りしていることを明かす

2016/4/7
ロンドンCharltonのパブ「The White Swan」で、来日公演のウォームアップギグを兼ねたライブを行う。メンバーはもちろん来日のラインナップ

2016/3/12
同日夜にクリスからの私信で「今回は日本へ行かない」旨を確認

2016/3/12
クリスがツイッターで来日公演をビルボードウェブのリンク付きで紹介。コメントはなし。自身の来日の有無にも触れず

2016/3/11
ジョン・ベントレーがフェイスブックに日本公演について投稿

2016/3/11
東京の追加公演が発表される。4/25(月)ビルボード東京。この追加公演日が来日公演の初日となり、結果、来日公演は4/25(月)26日(火)ビルボード東京、27日(水)ビルボード大阪という3日間の日程となる

2016/3/10
ビルボードウェブに掲載されたスクイーズの写真が来日メンバーのものに変更される

2016/3/2
スクイーズの英国オフィシャルサイトでようやく来日公演についてアナウンスされる。しかし、クリスやその他メンバーの来日については何も触れず

2016/2/22
来日メンバーがビルボードより正式に発表される
クリスの名前はクレジットされず。また、ベースはルーシーに代わって前メンバーのジョン・ベントレーが来日することが分かる

Glenn Tilbrook / グレン・ティルブルック(Vocals,guitar)
Stephen Large / スティーブン・ラージ(Keyboards,Background Vocals)
Simon Hanson / サイモン・ハンソン(Drums,Background Vocals)
Melvin Duffy / メルヴィン・ダフィー(Guitar,Background Vocals)
John Bentley / ジョン・ベントレー(Bass,Background Vocals)

2016/2/9
同日夜にドラムのサイモン・ハンソンが「4月に日本に行く」旨をツイート

2016/2/9
スクイーズ来日が発表される。4/26(火)ビルボード東京、4/27(水)ビルボード大阪の日程。ビルボードのウェブにはクリス・ディフォードがカットされた写真が掲載されたことや来日メンバーがグレン・ティルブルック以外未定となっていたことから、ファンの間で様々な憶測を呼ぶ
オフィシャルサイトではグレンソロライブの日程等が発表されるも、しばらくの間、スクイーズ来日に関しては何のアナウンスもされず
ビルボードライブ東京 ビルボードライブ大阪




来日メンバー紹介

Glenn Tilbrook / グレン・ティルブルック (Vocals,guitar)
スクイーズ結成以来、クリス・ディフォードとともにディフォード&ティルブルックとしてソングライティングの要であり、フロントマンであり続けるグレン。
ステージ上では今も昔も変わらぬハイトーン・ボイスとテクニカルかつパワフルなギターでオーディエンスを魅了し、作曲家としては一度聴いただけで口ずさみたくなるポップなメロディを生み出す能力に長ける。
2014年の最新ソロアルバム「HAPPY ENDING」やスクイーズのオリジナルアルバムでは17年ぶりのリリースが話題となった「CRADLE TO THE GRAVE」では、ギター以外にもシタールやウクレレなど数々の楽器を弾きこなし、マルチプレーヤーの一面も持つ。
ここ数年はスクイーズ以外にクリスとのデュオ活動、自身のソロバンドThe Fluffers(フラッファーズ)を従えての活動、そして完全に自身のみのソロ活動と、3つの活動形態を維持している(…が、線を引いたように完全に分けているわけでもない)。
1994年の初来日以来、クリスとのスクイーズ・デュオ、ソロを含めて今回のスクイーズで合計9度の来日を果たす親日ミュージシャンでもある。
また、初めて日本の地を踏むはるか前から寿司をはじめ和食が好物であることを公言しており、中でもウニが大のお気に入り。来日のたびに和食料理店に足を運び、ウニ丼をたいらげる様子も報告されている。
そんなグレンのステージはスクイーズ、ソロ、大きな会場、小さな会場、どんなパターンであれ、常に「ファンを楽しませる」ことに主眼をおいている。
欧米ではスタジアム級の会場を満員にする実力の持ち主であるが、過去の来日公演はいずれも小規模な会場での演奏だ。
しかし、それはショウの魅力を薄めることを意味せず、むしろよりアットホームでフレンドリーなステージを演出することに成功している。パブロックにもカテゴリー分けされることのあるスクイーズ。もともとの出自はそういう小規模なパブやライブハウスなので、そんな会場でのライブこそが彼の真骨頂だといえる。
アコースティックギター一本で奏でられるソロ、スクイーズの楽曲はエバーグリーンで魅力的だ。しかし、魅力的であるが故に「バンド演奏で聴いてみたい」という声が多くあったことも事実。そんな声をグレンはファンから日本に来る度、これでもかというほど聞かされていたはず。
今回の来日公演はクリス・ディフォードとベースのルーシー・ショーが不在という不規則なメンバーながらも、サウンドクリエイト面では強力なサポートを得て全く遜色のないラインナップといえる。
多くの日本のファンの声にグレンが応えてくれた。バンドスタイルのライブ、ついに日本に上陸!


Stephen Large / スティーブン・ラージ (Keyboards,Background Vocals)
キーボーディスト、作曲家、編曲家の顔を持つスティーブンは今年で47歳になり、スクイーズの正式メンバーの中では最年少だ。しかし、アルバムのクレジット等を見ると、サウンドプロダクション面においては非常に大きな貢献をしていることがわかる。
スクイーズへの加入はドラムのサイモン・ハンソンとともに2006年の再々結成時。ただし、2001年にリリースされたグレンのソロアルバム「THE INCOMPLETE GLENN TILBROOK」のライナーにスティーブン、サイモンの名前がクレジットされているので、グレンとの付き合いはその頃からとみていいだろう。
その後、スティーブン、サイモンにベースのルーシーを加えてグレンのソロバンド「フラッファーズ」を結成。2009年にはGlenn Tilbrook & The Fluffers名義で「PANDEMONIUN ENSUES」をリリースしている。
昨年スクイーズを脱退したジョン・ベントレーの後任としてフラッファーズのルーシーがスクイーズに加入している。つまり、スクイーズの現メンバーはクリス以外まるまるフラッファーズのメンバーでもあるのだ。クリスの言葉を借りれば「スクイーズがパックマンのようにフラッファーズを食べた」ことになる。
ちなみにスティーブンとルーシーは夫婦で、2016年2月現在男の子ひとりに恵まれている。
スティーブンのスクイーズキーボードプレーヤーとしての特徴は、これまたサイモンのそれと重なる部分があるが「オリジナル曲に忠実でありながらも個性がある」の一言に集約できると思う。
二人とも事あるごとに「スクイーズの歴代のプレーヤーに敬意を払って演奏している」と公言している。「オレが新しいスクイーズのサウンドを作るのだ」ではなく、あくまでかつてのメンバーのプレイスタイルやアレンジを尊重しながら、その上で自流のスタイルをも保っている。これはプレーヤーとしての実力がなければできない芸当だろう。
そして、その実力こそがグレンとクリスに一目置かれ、長年にわたってスクイーズの一員でいることの証ではないだろうか。
また、写真を見ての通りなかなかのイケメンであり、ステージ上ではビジュアル的にも女性ファンの目も楽しませてくれることだろう。
そんなイケメンスティーブンであるが、ステージ上でエキサイトしてくると、たまに奇行を見せることがある。例えば、フラッファーズのステージではおもむろにルーシーをお姫様抱っこっぽく抱きかかえたかと思うと彼女のお尻を使って鍵盤を弾いてみたり、またマイクを口の中にすっぽり入れてウンウンと唸って変なサウンドを出したり…と、枚挙に暇がない(笑)
最近は年を重ねたせいで(?)以前と比べると奇行は少なくなった感もあるが、そんな"変態パフォーマンス"が来日公演でも見られるだろうか?奇想天外という意味では、もっとも楽しみな来日メンバーだ。


Simon Hanson / サイモン・ハンソン (Drums,Background Vocals)
グレン、スクイーズとの付き合いはスティーブンとほぼ同時期になる。オリジナル曲に忠実に演奏しながらも、力強いドラミング&パーカッションを見せてくれるサイモンは、今ではスクイーズになくてはならない存在だ。
スティーブンの紹介でも触れたように、彼も歴代のスクイーズのメンバーに敬意を払いながら演奏している。もっともサイモンの場合は、歴代のスクイーズのメンバー=ギルソン・レイヴィスその人となるだろう。1990年代以前のスクイーズしかピンとこないファンであっても今のサウンドを安心して聴くことが出来るのは、ひとえにこのサイモンとスティーブンの力によるところが大きい。
スクイーズ以外でも活躍の場は多く、英国のサイケエレクトロニックバンドDeath in Vegasのオリジナルメンバーでもある彼は、数々のバンド、セッションでドラムを叩いている上に作曲やプロデュースもこなす実力派ミュージシャンだ。
また、ドラム、パーカッション以外にコーラスができることも彼の特徴であり、グレンのソロアルバム「HAPPY ENDING」では一曲でボーカルもとっている。
グレンとはプライベートでも仲が良く、2009年のグレンソロ来日公演の際には一緒に来日して一部の公演でステージに立った。
そのサイモンが一緒に来日するとの一報を聞いた際の個人的な気持ちを正直に告白すると「グレンと一緒に来るってクリスじゃないのか…。なんだか地味なメンバーが来るんだな」と思ったものだ。
しかし、いざステージをみるとスクイーズのドラマーとしての存在感もさることながら、終演後のサイン会では、その人懐っこくてフランクな性格と人柄に魅了され、たちまち大ファンになってしまった。
ただ、イタズラ好きな面もあるようで、件のサイン会のときに私がCDにサインを求めた際、グレンと目を合わせてニヤッとしたかと思うと、二人でおもむろにサインを始めた。その書かれたサインを見ると、どうも彼ら自身のサインの字体ではない感じ。その時には分からなかったが、帰宅してじっくり見ているとようやく理解できた。なんと、二人が書いたのは、それぞれスティーブンとルーシーのサインを真似たものだったのだ(笑)
バンドの移動やリハ中にビデオカメラを回して動画を撮影することも多く、自身のフェイスブックにマメにアップしている。来日中のスクイーズの動向を知りたければ、サイモンのSNSを要チェックだ。
Simon Hanson フェイスブック Simon Hanson ツイッター


Melvin Duffy / メルヴィン・ダフィー (Guitar,Background Vocals)
ペダル・スティール・ギター奏者の肩書きを持つメルヴィン・ダフィー。彼は英国で最も若い奏者といわれている。ペダル・スティール・ギターのみならず、普通のエレキ&アコースティックギターはもちろん、バンジョーやマンドリンといった弦楽器も操り、さらに作曲や編曲も手がけるマルチプレーヤーでもある。
音楽家の家庭に生まれるという恵まれた環境に育ち、初めてステージに立ったのはなんと8歳の時だそう。
メルヴィンはスクイーズの正式メンバーではない。今回の来日もサポートメンバー扱いである。正確な年齢は不明であるが、スクイーズ最年少のスティーブンよりも幾分若いと思われる(* 追記:スティーブンより1歳年上であることが分かりました)
メルヴィンはポール・ヤングを中心に結成された南米音楽を身上とする英国人バンドThe Los Pacaminosのメンバーでもある。
彼らのウェブをみれば分かるように、スクイーズと同じくここでもメルヴィンは一回り以上も年上のミュージシャンたちと活動を共にしている。
The Los Pacaminos公式サイト
いかにメルヴィンがミュージシャンとして年相応以上の実力があるかということが分かる。
(なお、このThe Los Pacaminosは、1990年代前半にスクイーズのセカンドキーボーディストとして在籍し、昨年4月に死去したマット・アーヴィング氏が最後に籍を置いたグループだった)
スクイーズと縁を持つきっかけとなったのは、2006年にリリースされたクリスのスクイーズセルフカバーアルバム「SOUTH EAST SIDE STORY」でペダル・スティール・ギターを弾いたことによる。その後もクリスのソロアルバム「THE LAST TEMPTATION OF CHRIS」(2008年)や、グレンとNine Below Zeroの共作「THE CO−OPERATIVE」(2011年)に参加した。
そして、昨年の「CRADLE TO THE GRAVE」では3曲で演奏し、同年秋から年末にかけて行われた英国ツアーにもサウンド面での強力なサポートメンバーとして同行している。
サポートメンバーとはいえ、新譜での貢献度の高さやスクイーズの楽曲を10年前から演奏しているという事実を踏まえると、このメルヴィンを伴っての来日はスクイーズにとって非常に心強いものになるはず。考えようによっては昨年の英国ツアーよりも、さらに円熟味の増した演奏が聴けるともいえるだろう。
メルヴィンの参加で、いよいよ来日公演が楽しみになってきた。


John Bentley / ジョン・ベントレー (Bass,Background Vocals)
諸事情により来日しないベーシスト、ルーシー・ショーの代役として(* 下に追記)、急遽来日メンバーに白羽の矢がたったのがジョン。
華奢な体で器用にウッドベースを操るルーシーの姿を拝めないのは残念だが、ルーシーの代役としてはこれ以上にない人が来日する。
代役としては適任もいいところで、逆にジョン以外に考えられないだろう。なにせ昨年の夏までスクイーズのベーシストだったのだ。むしろ、今となっては見ることのできないスクイーズとしてのジョンに会える千載一遇のチャンスを日本のファンは得た。
ファンの間で早くも名作の呼び名が高い最新作「CRADLE TO THE GRAVE」は、ジョン脱退とルーシー加入の過渡期に録音されている。つまり、ジョンがベースを弾いている曲も何曲かあり、この名作の立役者のひとりなのだ。
また、ジョンは1980年代前半の、スクイーズがもっとも脂の乗った時期のサウンドを支えたベーシストでもある。往年のファンはビルボードのステージに立つジョンを見て、きっと「あの頃のスクイーズ」に思いを馳せることができるだろう。
もちろん、ノスタルジーを醸し出すだけでなく、今でもバリバリの現役ミュージシャンである。
2014年にアナログ盤とiTunesのみでリリースされたソロアルバム「... based on a true story」は、CDでプレスされていない影響もあるためか残念ながら知名度こそ低いものの、ブリティッシュテイスト漂う良作だ。
ジョンのウェブで試聴できるので、ぜひ聞いてみて欲しい。
John Bentley公式サイト
元スクイーズという肩書きに矜持を持つジョンのこと、きっとこの東京、大阪の地でも全盛期に引けを取らない演奏をファンに見せ付けてくれるはずだ。

* 追記:ルーシーが来日しなかった理由は自身の出産によるものでした。スクイーズ側から公式なアナウンスはありませんでしたが、ジョンが英国Littlehampton Gazette発行の「WOW」誌のインタビューでそのことについて触れていました。




来日関連資料、リーフレット等

今回の来日公演はビルボードライブのシステム上、席や購入方法によっては手元に残るチケットは存在しないのが残念ですが、数多くの販促リーフレット等が作成されました。
東京と大阪で共通のリーフレットはひとつとして存在せず、また同じ情報誌でも東京と大阪でレイアウトが異なっていたりして視覚的にも楽しませてくれます。

* 画像をクリックすると拡大してご覧いただけます
* 大阪版の情報誌とリーフレットは全て なおひこさん よりご提供いただきました。多大なご協力に深くお礼申し上げます。



ビルボードライブ情報誌4月号(左:東京 右:大阪) 

紹介記事(東京)

紹介記事(大阪)



ビルボードライブ情報誌5月号(左:東京 右:大阪) 

紹介記事(東京)

紹介記事(大阪)



葉書リーフレット(東京) 

葉書リーフレット(東京:追加公演記載分) 

リーフレット(大阪) 



リーフレット(東京) 

USEN放送広告(ビルボードライブ情報誌9月号) 



毎日新聞2016年5月19日(木)夕刊 芸能面 

ミュージックマガジン 2016年6月号 





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